なぜ、怖いと腰が抜けるのか

フーフーです。ものすごく怖い思いをした時、「腰が抜けた」「足に力が入らない」ということがあります。本当に人間の身体は、怖いだけで立てなくなるのでしょうか。

中国医学では、恐れという感情は腎と深く関係すると考えます。
よく「恐則気下」といいます。恐れると気が下がるという意味です。
ただし本当は、単純に「気が下がったから腰が抜ける」とは考えません。その時に身体の中で、気がどのように動いたのかを考えていきます。
腎には、身体の水分や気を下へ導く働きがあります。
これを潤下として考えます。
普段はこの働きによって、上半身と下半身の気血津液のバランスが保たれています。
ところが突然、大きな恐怖を感じたとします。
身体は一瞬で緊張します。
そして恐れによって気が急激に下へ向かいます。
ゆっくり降りるのではありません。一気に下へ押し込まれるような状態です。
すると腎が本来行っている穏やかな潤下の働きが乱れ、下半身に気が集まり過ぎてしまいます。
怖くて身体が動かない。
足が固まる。
その場から逃げたいのに、一歩が出ない。
これは気が下へ集まり、固まってしまっている状態として考えることができます。
ところが恐怖の瞬間が過ぎます。
「ああ、助かった」
そう思った途端、身体の緊張が緩みます。
ここで、もう一度大きな変化が起こります。
下に固まっていた気が、一気に解放されるのです。
気は上へ昇り、胸や頭の方へ戻ろうとします。
すると今度は、下半身が空っぽになります。
足を支えていた気がなくなる。
腰を支えていた気も不足する。
その結果、膝から崩れるように座り込んだり、腰に力が入らなくなったりします。
これが「腰が抜ける」という現象です。
面白いのは、恐怖を感じている真っ最中よりも、恐怖から解放された直後に力が抜けることがある点です。
怖い間は、まだ身体が必死に自分を支えています。
しかし「もう大丈夫」と心が判断した瞬間、張り詰めていた気が緩みます。
そこで初めて、下半身の気の不足が表面に現れるのです。
びっくりした後に手足が震えるのも、同じように気の急激な変化として考えることができます。
つまり恐怖とは、単なる心の問題ではありません。
恐れによって気が下がり、固まり、その後に上へ戻る。
わずかな時間の中で、身体では非常に大きな気の昇降が起こっているのです。
だから中国医学では、心と身体を別々には考えません。
感情が動けば、気が動きます。
気が動けば、血や津液も動きます。
そして、その変化が身体の症状として現れます。
まとめは、怖い時に腰が抜けるのは、単に「びっくりしたから」ではありません。恐れによって気が急激に下がり、腎の潤下の働きが乱れて下で固まり、緊張が解けた瞬間にその気が一気に上へ戻る。すると下半身を支える気が空っぽになり、腰や足に力が入らなくなるのです。「恐則気下」という言葉の中には、感情によって身体の気が大きく動くという、中国医学ならではの人間観が隠されているのです。



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